そこで、.NET FrameworkにはIDisposableというインターフェイスを用意されていて、もうこれ以上このインスタンスは使わないから明示的にリソースを解放したいと思ったときにはDisposeメソッドを呼べばいいようになっています。
このインターフェイスは様々なクラスで使用されており、例えばイベントの購読停止だったり、ファイルのロックの解除だったりといった終了処理が行われます。また、言語面でも優遇されており、using構文を使うことで自動的にtry-finally構文に展開され確実にDisposeメソッドを呼ぶことができるようにもなります。
逆に、自動で解放されないリソースを使用する場合、それを使うクラスでIDisposableインターフェイスを実装しなければなりません。
IDisposeインターフェイスがDisposeメソッド1つのみしか持たないので「そのDisposeメソッドの中で解放処理をすればいいんでしょ?」と思ってしまいたくなりますが、実は話はそんなに単純ではありません。Disposeパターンと呼ばれるもうちょっとしっかりした実装が必要になってくるので、この記事では自動で解放されないリソースをサンプルとして使いつつその実装のしかたを見ていきたいと思います。
Disposeパターン
さて、 Disposeパターンはどういう書き方をするのか、ひな形を暗記しなければならないのかと思ったそこのあなた、心配いりません。IntelliSenseがひな形を用意してくれています。これに従ってひな形を作るとこのようなコードが自動生成されます。
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まず注目すべきは、インターフェースで規定されたDispose()メソッド以外にDispose(bool disposing)メソッドが用意されています。Dispose()メソッドからはDispose(bool disposing)メソッドを呼び出しているだけになっていますね。
実は、リソース解放処理を行うのはDispose(bool disposing)メソッドのほうになっています。この引数のdisposingは「Dispose()メソッドの呼び出しによってリソース解放処理を行うのかどうか」を示す引数です。
GCがこのクラスを回収に来た時、すなわちファイナライザが呼ばれたときは、そのクラス内で使っているGCが回収できるリソース(マネージドリソース)を敢えて解放する必要はありません。なぜならば、それらもGCが回収するからです。ですが、わざわざDispose()メソッドを呼び出してリソースを解放しようとするときは、内部的に使っているマネージドリソースもしっかり解放してあげないと、当然そのタイミングではGCが回収しに来ないためリソース解放漏れになります。
逆に、アンマネージドリソースは、Dispose()が呼び出されたときでもファイナライザが呼び出されたときでも確実に解放する必要があります。ですので、if(disposing)のブロックの外に解放処理を書き、ファイナライザをコメントアウト解除する必要があります。
また、ファイナライザに呼ばれるより先にDispose()メソッドが呼ばれた場合は、解放処理が重複してしまいますので、GC.SuppressFinalize(this);を呼び出してファイナライザの作動を抑制する必要があります。
あとは、disposedValueフィールドですでにこのクラスが破棄されたかどうかを保持しておりますので、もしもDispose後にこのクラスのメソッドやプロパティにアクセスされたときはObjectDisposedExceptionを投げるようにしてあげましょう。
サンプルコード:COMによるC#からのExcel操作
さて、Disposeパターンの実装がわかったところで、自動で解放されないリソースをDisposeパターンで記述するサンプルコードを書いてみましょう。自動で解放されないリソースの代表格としてCOMがあります。「C# Excel」とかでググるといくらでもCOMを使った記事が出てきますが、その記事の数だけ「ソフトを終了したのにタスクマネージャーを開いたらEXCEL.EXEが残ったままだ」というコメントが見られることからも、リソースの解放が重要になってくるリソースです。
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COMはアンマネージドリソースですので、ファイナライザやSupposeFinalizeメソッドのコメントアウトを解除する必要があります。
ときどきSystem.Runtime.InteropServices.Marshal.ReleaseComObject(obj);の必要性やについての議論や、ひどい場合は「これを書かないからEXCEL.EXEプロセスが残ってしまう」といった誤った記述がされているサイトがありますが注意してください。
Workbook.Close()でワークブックを閉じて、Application.Quit()でアプリケーションを閉じさえすればEXCEL.EXEプロセスは正常に終了されます。Marshal.ReleaseComObjectは、.NETからのCOMオブジェクト(=Excelを操作するためのインターフェイス)を解放するためのメソッドで、これの有無にかかわらずExcelはしっかりと終了してくれます。
リソースの解放をしたらそれ以降はExcelの操作をしないわけですから、COMオブジェクトを解放しておくべきでしょう。
こうすることで
1 2 3 | using (var excel = new ExcelApp( @"test.xlsx" )) { } |
他にも、敢えてDispose()を呼び出さないようなコードを書いても、ちゃんとアプリケーション終了時にGCがファイナライザを呼び出してExcelが終了されることが分かります。 このDisposeパターンは確実にアンマネージドリソースを解放する方法として有効でしょう。
※上記のDisposeパターンのプログラムは、Disposeパターンの説明をするために書いているものでExcelを終了させるうえで完璧ではない点に注意してください。例えば、Excelを開いている間にファイルに変更を加え、保存せずにDisposeメソッドが呼ばれるとExcelのメッセージボックスで終了処理がブロックされます。
利用者は、各自アレンジして使ってください。
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